手続き全般について

どこまで聞かれるのか?過去の債務整理歴

裁判所には過去の債務整理を説明する

個人再生の申立書は、各裁判所が独自の書式を用意しており、それに従って記載する必要があります。

大阪地方裁判所の申立書には、職歴や収入、負債の原因、税金の滞納、差押の有無などを記載する欄があります。

また、過去に再生手続や破産、任意整理を行った経歴を記載する欄もあり、正確に記載することが求められます。
今回は、裁判所が過去の債務整理歴を尋ねる理由や、過去に債務歴があった場合、申立てに及ぼす影響について、詳しく解説します。

 

債務整理歴を聞かれる理由

大阪地裁の場合には、申立書の後半に、以下の債務整理歴を記載する欄があります。

  • 個人再生を過去に行ったことがあるか、その時期 ※注1
  • 自己破産により免責を受けたことがあるか、その時期

これらを尋ねる理由は2つあります。

理由その1:申立制限があるため

個人再生手続には、一定の申立制限があります。

  •  給与所得者等再生を利用した人は、認可確定から7年間は同じ手続を申し立てることができません。
  •  自己破産で免責を得た人も、免責確定から7年間は給与所得者等再生を利用できません。

ただし、再生を利用される方の9割ほどは「小規模個人再生手続」を選択します。

この場合、過去に破産や個人再生の申立歴があっても、法律上の制限はありません。

そのため、実際に、過去の申立て歴があるからといって、申立て制限に触れる事案は殆どありません。

理由その2:過去の債務整理歴が再申立の審査に影響を及ぼすため

たとえ申立制限に該当しなくても、過去に破産や個人再生を行っている場合、裁判所は再生手続きの認可について慎重になる傾向があります。

特に、認可後、数年以内の再申立(短期間で再び経済的に行き詰まった場合)や、同じ原因による再申立(ギャンブルや浪費が原因の場合)の場合、慎重を期すため、個人再生委員が選任される可能性が高まります。※注2

このように、再申立の場合は、再生委員を選任される可能性が上がる傾向にあります。

任意整理歴が及ぼす影響

大阪地裁では、再生、破産歴のほか、過去に任意整理(特定調停含む)により、債権者と分割弁済合意を行ったかどうか質問されます。

この点、任意整理の交渉中から再生に移る場合や、任意整理による合意後の弁済中に再生申立する場合、法律上の申立制限はありません。

裁判所が任意整理歴を尋ねる理由は示されていませんが、おおむね以下の理由によるものと考えられます。

  • 任意整理から再生に移行する際に対象債権者の漏れを防ぐため、
  • 任意整理が失敗した理由を確認するため、
  • 任意整理の期間中に財産処分が行われたかを確認するため

実務上、任意整理歴があること自体は、申立てにおいて不利に影響するものではありません。

近年では、一度任意整理で利息をカットして分割弁済を始めたものの、月々の支払が高過ぎて払えず、途中で個人再生へと方針を転換するケースが増えています。
このような場合「債権者が反対するのではないか」と心配される依頼者もおられます。

しかし、正常な弁済から再生申立に移行する場合に比べ、任意整理から再生申立へと移行する事案が、特に反対されやすいといった傾向は確認されていません。

もし、再生、破産歴を隠すとどうなる?

個人再生を再申立する方の多くは、前回とは別の弁護士に依頼しています。

そのため、前回の申立に関する記録を残していない場合、新しい弁護士は過去の申立内容を把握できません。

しかし、申立後に裁判所が過去の申立て歴を調査し、再申立が判明した例や、債権者の取引履歴や回答書類から過去の申立歴が判明した例があります。

特に、大阪地裁のように過去の申立歴を記載する欄を設けている裁判所で虚偽の記載をした場合、その後の審査が厳しくなる可能性が高いです。

具体的には、通常よりも長い期間の通帳履歴提出を求められたり、履行可能性を慎重に判断するために再生委員を選任されるといった影響が出ることが考えられます。

よって、債務整理歴がある方の場合、申立までに必ず申立を担当する事務所にそのことを伝えましょう。

 

まとめ

以上の点を踏まえると、個人再生の申立と過去の債務整理歴について、以下のようにまとめられます。

  •  個人再生の申立では、過去の債務整理歴を問われた場合、できる限り正確に回答する必要がある。
  •  過去に申立歴がある場合、裁判所の審査が厳しくなることがある。
  •  虚偽の記載をすると、裁判所の調査が厳しくなり、不利な結果につながる恐れがある。

個人再生を検討している方は、過去の債務整理歴を正しく申告し、慎重に手続きを進めることが重要です。

 

★再生の再申立に関しては、以下の記事もご参照ください。

再度の再生申立は可能? 実例でみる個人再生の再申立て

 

 

注1 ハードシップ免責を受けたことがあるかどうかも聞かれます。
注2 個人再生委員は、次のようなケースで選任されることが一般的です
  •  事業者などの債務・財産規模が大きい
  •  不動産や遺産、賠償請求権など評価が難しい高額財産がある
  •  履行可能性の判断が難しい

監修者情報

弁護士

吉田浩司(よしだこうじ)

専門分野:債務整理事件(任意整理・個人再生・自己破産など)

2004年(旧)司法試験合格 2006年弁護士登録、2010年8月にTMG法律事務所開業。任意整理、個人再生、自己破産等の債務整理事件に数多く取り組んでいる。特に個人再生の取扱が多い。