分割払い停止で何が起こる?スマホ・エコキュート・太陽光発電の引き揚げ対応
個人再生手続では、任意整理と違い、一律全ての返済を止めてから再生を申立てします。
このとき、購入時に所有権留保の特約のある物品については、引き揚げを要求されることがあり、それぞれに対応が必要です。
今回は、所有権留保が影響する物品の代表例として、スマートフォン、エコキュートなどの住宅設備、太陽光発電システムについてご説明します。
1.所有権留保とは?基本的な仕組み
2. スマートフォンの引き揚げ事例と注意点
3. エコキュート・ガス機器の引き揚げ問題と実務対応
4. 太陽光発電設備の所有権と回収の現実
5.個人再生手続における所有権留保物件の扱いと対策
1.所有権留保とは?基本的な仕組み
所有権留保とは、購入者が代金をすべて支払うまで売主が所有権を保持し、未払いが発生した場合には商品を引き揚げることができる仕組みです。
主に高額商品の分割払いで利用され、個人再生手続でもよく関わる手続きです。
2. スマートフォンの引き揚げ事例と注意点
(1)端末代金を通信料金とは別に支払っている場合
最近、スマートフォン本体をAppleなどの販売店から直接購入し、通信契約を格安スマホ会社で別に締結する方が増えています。
この場合、購入時に後払いや分割払いを選択される方が多いですが、個人再生手続を行う際には、残代金の支払を停止するため、債権者から端末の引揚げを求められることがあります。これまで、Paidy(ペイデイ)を利用してスマートフォンを購入した方について、同社から返還を求められた例が多数あります。
ただし、年式が経過した端末については、返還を求められないこともあります。
スマートフォンは、キャッシュレス決済のアプリが使われることも多く、日常生活に欠かせない存在です。
そのため、再生申立の前に、「何とかスマートフォンを残すことができないか」という相談がよく寄せられます。
対応策として、債権者に残債務額を確認し、家族や友人に一括清算してもらうことが考えられます。
しかし、家族や友人に一括で支払ってもらえない場合、依頼者本人が残債務を支払いを済ませ、その後で個人再生を申立てたケースもあります。
この場合、再生手続き上違法な「偏頗弁済」(へんぱべんさい)に該当する可能性が高いことが問題になります。
そのため、裁判所に対し、支払いの必要性や妥当性を説明しなければならず、弁護士と相談しながら対応する必要があります。
(2)端末代金を通信料金と一緒に支払っている場合
スマートフォンの端末代金と通信料金を同じ会社で契約し、分割払いしている場合、端末代金も債務に含まれるため、できれば支払を止めたほうが良いです。
しかし、端末代金と通信料は分けて支払うことは(通常)できません。
利用料金を支払わないでいると、通信会社は回線の使用を停止したり、回線を解約することになります。
その結果、スマートフォンが使えなくなり、日常生活に大きな支障をきたすことも考えられます。
このような状況を踏まえて、月々の端末代金の支払が高額でなければ、通信料金とあわせて支払い続けることが事実上認められるケースもあります。
こちらの場合も上記同様、個々の事情も鑑みて、弁護士と相談しながら対応する必要があります。
3. エコキュート・ガス機器の引き揚げ問題と実務対応
住宅設備であるエコキュートやガス機器(エコジョーズ、ビルトインコンロなど)には、所有権留保が設定されることがあります。
これらの機器の分割払いは光熱費とは異なり、個人再生手続において偏頗(へんぱ)弁済とみなされるため、支払いを継続することはできません。
そのため、支払を停止すると、所有権者から引揚げを求められる可能性があります。
しかし、エコキュートやガス機器は、住宅設備として家屋に固定されており、取り外しには、工事費用や運搬費用がかかります。
また、中古市場での価値が低いため、債権者が高額の費用をかけてまで回収するケースは多くありません。
実務上、債権者に対して回収の困難さを説明し、所有権の放棄を求めることで、引き揚げを回避できた事例もあります。
ただし、契約内容次第では引き揚げの対象となりますので、弁護士と相談しながら対応を進める必要があります。
4. 太陽光発電設備の所有権と回収の現実
太陽光発電設備は高額であるため、所有権留保付きのローン契約が設定されることがあります。対応方法は以下の2つのケースに分かれます。
(1) 所有権留保付きのローン契約
この場合、支払いを停止すると、債権者が設備を引き揚げる可能性があります。
ただし、太陽光発電設備は屋根に設置されているため、取り外しが困難であり、天候の影響で劣化しやすい特徴があります。
そのため、中古市場での価値が低く、回収費用も高額になることから、債権者が引き揚げを断念することも少なくありません。
(2) 住宅ローンに組み込まれている場合
太陽光発電設備の設置費用が住宅ローンに含まれているケースでは、通常の住宅ローンと同じ扱いになります。
そのため、個人再生手続で「住宅資金特別条項」を利用できるかどうかが重要なポイントとなります。
(3)住宅資金特別条項の適用可否
住宅ローンに含まれる太陽光発電設備の割合が大きい場合、「住宅資金貸付債権」に該当しない可能性があります。
その場合、住宅資金特別条項の適用が認められないこともあるため、ローン契約の内容を確認し、弁護士と相談しながら慎重に進める必要があります。
5.個人再生手続における所有権留保物件の扱いと対策
所有権留保が設定された住宅設備やスマートフォンなどの機器は、分割払いを停止すると引き揚げのリスクが生じます。
特にスマートフォンは日常生活に不可欠であり、通信契約と端末代金の支払い状況によって対応が異なります。
通信料金と一緒に支払う場合、偏頗弁済となる可能性があるものの、継続使用が認められるケースもあります。
また、エコキュートやガス機器、太陽光発電設備などの住宅設備も同様に所有権留保により引き揚げの対象となる場合があります。
しかし、これらは取り外しや運搬に高額な費用がかかるため、債権者が実際に引き揚げを行うことは少なく、交渉によって所有権を放棄させた例もあります。
いずれのケースでも、支払い停止による影響を最小限に抑えるためには、事前に弁護士と相談し、債権者との交渉を適切に進めることが重要です。
あとがき
自動車(バイク含む)にも、所有権留保が付く場合が多いです。
自動車の支払停止と引き揚げについては、以下の記事を参照にしてください。
個人再生でローン中の車はどうなる?具体的な流れを詳しく解説
監修者情報

弁護士
吉田浩司(よしだこうじ)
専門分野:債務整理事件(任意整理・個人再生・自己破産など)
2004年(旧)司法試験合格 2006年弁護士登録、2010年8月にTMG法律事務所開業。任意整理、個人再生、自己破産等の債務整理事件に数多く取り組んでいる。特に個人再生の取扱が多い。