個人再生は家族に知られず手続きできる?申立時に求められる情報と注意点
債務整理はしたいものの「家族には知らせたくない(知られたくない)」という方は多いです。
しかし、個人再生の場合、裁判所に対し、申立人個人だけでなく、世帯単位での収支を報告する必要があるため、一定の限度で家族の情報を伝えることがあります。
今回は、個人再生の申立てを行う際に、裁判所に伝える家族の情報にはどのようなものがあるのかにつき、具体的に説明します。
※ 以下で説明する家族の必要情報、資料等については、自己破産申立の場合もおおむね似ています。
ただし、説明が必要な事項は全国一律ではなく、各地の裁判所や申立の内容に応じて変わる場合があります。
目次
家族構成、離婚歴
家族の収支に関する資料
家族に対する債務
家族の財産
家族の申立てが必要になる特殊な例
まとめ
家族構成、離婚歴
申立書には、同居の親族の年齢や収入はもちろん、別居中の父母、配偶者、子どもの情報も記載する必要があります。
主な理由は、養育費や婚姻費用(または親族への生活援助)の発生や延滞状況を確かめることがあるからです。
なお、裁判所から家族に直接連絡が行くことはありません。
家族の収支に関する資料
家計収支表とは
再生(または破産)の申立てには、「家計収支表」の提出が必要になります。
家計収支表とは、月々の事業所得、給与(収入)と、それらを何に使っているのか(支出)を示す月ごとの家計簿のような計算書です。
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【家計収支表の作り方】
家計収支表には、家族分の収入や支出はもちろん、婚約者など同居人の分も基本的に合算します。
ただし、二世帯住宅など、完全に家計が分離している場合には、提出しなくてもよいことがあります。
収入に関する資料
ご夫婦の場合には、配偶者の収入の証明として給与明細などが必要になります。
配偶者が自営業の方は、売上金が入金された通帳や、前年度の課税証明書(又は確定申告書類)の提出を求められることがあります。
支出に関する資料
家計収支表には、高額の支出や、毎月一定額の支払が見込まれる支出(住居費、水光熱費、通信料、保険料、税金など)について支払った証明書類を添付します。
申立人のご家族がこれら高額支出、固定支出を支払っている場合、家族の通帳の写しや、利用明細資料等の提出が必要になります。
家族に対する債務
借入金、養育費など
家族から借金をしている場合や、離婚した元妻に慰謝料や養育費を支払っている場合には、その根拠となる契約書、公正証書等の提出が必要です。
ご本人からの申告がなくても、通帳に個人名の記載があることで債務の存在が判明し、報告が必要になる場合もあります。
債権放棄の説明
ご本人に貸付をした親族が「もう返済を求めない」との意向を示している場合には、債権放棄の書面があれば、その人を手続から除外することができます。
当事務所では、先に弁護士から書面等で確認を求めることが多いです。
特に、申立前までの通帳履歴に数十万円や数百万円など高額の金銭移動がある場合には、その事情を必ず確認します。
保証債務(奨学金)
親、親戚に奨学金の保証人になってもらっている場合、家族の住所や氏名を、再生申立時点の債権者として掲載する必要があります。
債権者には、裁判所からの通知が届くことになり、秘密にしておくことはできません。
親族保証分が気になる方は、まだ奨学金を支払えているうちに、保証人の変更について相談したほうがよいです。
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家族の財産
親族所有の家に住んでいる方
個人再生手続きの申立人が、妻(夫)や両親名義の自宅に住んでいる場合、その登記情報を提出する必要があります。
ただし、登記情報は、住所さえ分かれば誰でも取得できるため、それほど困ることはありません。
自動車を共用している方
個人再生手続を申立てる家族が自動車を使用している場合、家族名義のものも含めて車検証を提出します。
なお、自動車を使用しているかどうかは、「家計収支表」の記載欄や、通帳での支払い履歴などから判明します。
家族の保険を払っている方
保険については、原則として本人名義の保険契約のみ、契約内容・保険料・解約返戻金を示せばよいです。
しかし、家計収支表に家族分の保険料負担がある場合や、本人名義の保険料と通帳から引き落とされる保険料額が一致しない場合、
夫が妻子名義の保険料を支払っていることが多いです。このような場合、家族名義の保険内容の開示が必要になることがあります。
家族の申立てが必要になる特殊な例
大阪地裁では、自宅をペアローンで組んだ夫婦の場合、夫婦の一方が住宅資金特別条項付き個人再生を申立てるには、他方の配偶者にも個人再生申立が必要になります。
夫婦ともに負債に困っている場合には理解が得られやすいです。
しかし、債務原因がもっぱら夫にある場合や、妻には債務がない場合などは、妻の理解が得られずに申立に苦労する例もあります。
なお、個人再生委員が選任されたうえで、妻の申立ての必要性が低いこと、住宅ローン債権者も一方のみ再生申立てで了承していることが確認できた場合、単独での再生申立が許可された例があります。
まとめ
個人再生を申立てる際、家族に知られずに手続きを進めたいと考える方は多いです。
しかし、世帯単位の収支が返済可能性に影響するため、裁判所には、家族に関する情報をある程度開示することを求められます。
家族構成は、同居・別居を問わず、養育費や婚姻費用の有無を確認するために必要です。
家計収支表 には、申立人と同居する家族の収入・支出を記載し、給与明細、通帳の記録、光熱費・通信費・保険料などの払込票や請求書を証拠として添付する必要があります。
家族への借金や奨学金の保証人情報 は、申告しなくても通帳の履歴などから判明する可能性があり、場合によっては債権放棄の書面が必要になります。
家族名義の財産 についても、住宅の登記情報や車検証、保険証券など、提出を求められることがあります。
個人再生の申立てにあたっては、裁判所に求められる家族関係の情報を正しく理解し、適切に準備を進めることが重要です。
ある程度秘密にしたい事情があっても、事前に専門家に相談し、最適な方法を検討することをおすすめします。
監修者情報

弁護士
吉田浩司(よしだこうじ)
専門分野:債務整理事件(任意整理・個人再生・自己破産など)
2004年(旧)司法試験合格 2006年弁護士登録、2010年8月にTMG法律事務所開業。任意整理、個人再生、自己破産等の債務整理事件に数多く取り組んでいる。特に個人再生の取扱が多い。