再度の再生申立は可能? 実例でみる個人再生の再申立て
再生手続きは、一生のうちに何度も行うものではありません。
しかし、さまざまな事情によって、再度、再生申立てを行う方もおられます。
この記事では、個人再生を再申立てする場合の注意点や、実際の扱いについて説明します。
再申立ての主なケース
再申立てにはいくつかのパターンがありますが、特に現実に生じやすい以下の3つのケースを紹介します。
認可後の再申立て
個人再生を申立てて認可され、支払いを完了したものの、数年後に再び債務が増えて再申立てが必要になったケース。
廃止後の再申立て
個人再生を申し立てたものの、裁判所から履行可能性について疑問を持たれたり、債権者から不同意の意見が出されたため手続きが廃止となったケース。その後、準備を整えて再び再生認可を求めて申立てるケース。
取下げ後の再申立て
個人再生を申し立てたものの、裁判所の指摘に対応できず、手続き開始前に取り下げたケース。その後、準備を整えて再び再生認可を求めて申立てるケース。
再申立に至る事情は、上記の3つに限られるものではありませんが(※1)、今回は、実際に起こる可能性が高い上記の3つに限ってご説明いたします。
認可後の再申立て
前回の申立ての時期や原因について、必ず説明する必要があります。
たとえば、前回は親の保証債務が原因で、今回は子の教育費が理由であれば、債務原因についてはそれほど問題視されません。
しかし、同じ原因で2度にわたり返済不能に陥っている場合、裁判所からは、「金銭管理が適切に行えていないから、払える見込みが厳しいのではないか。」と消極的に判断され再生が認可されない可能性があります。
このような場合には、前回と今回の事情の違いや、債務原因の解消に向けて真剣に努力していることなどを積極的に説明することが重要です。
たとえば、ギャンブルが原因の場合、クリニックへの定期的な受診、自助グループへの参加、金銭管理について家族に管理をお願いするなどが考えられます。
説明が不十分な場合、履行可能性に疑問を持たれ、個人再生委員が選任される可能性があります。
なお、個人再生のうち、「給与所得者等再生」は、再生計画認可の確定から7年を経過していないと申立てできません。
これは、前回の申立てが自己破産であった場合も同様で、免責確定から7年が経過していないと給与所得者再生の再申立てができません(※2)。
ただし、現在申立てられている個人再生の9割以上は「小規模個人再生」です。
小規模個人再生には、このような再申立て期限はありません。
廃止後の再申立て
一旦申立てを完了し、手続きが開始されたものの、認可を待たずに会社が倒産したり、病気やケガで失業して収入を失った場合には、「履行可能性なし」として手続きが廃止されることがあります(収入減少による廃止)。
また、申立後、実家の土地所有権や会社の積立金、保有株などの財産が判明し、手持ち資産(清算価値)が増額評価され、支払金額が想定よりも高くなったことで積立額が不足して、実現可能性のある再生計画案が示せず、手続き廃止に至ることもあります(清算価値増加による廃止)。
当事務所では、このような例は少ないですが、最近は不動産価値の上昇もあり、他事務所で申立完了後に廃止となり、相談に来る方も増えています。
このような案件では、次の申立てまで十分に時間をかけて準備をしたいところですが、既に支払いを止めて相当の期間が経過しているため、遅延損害金が日々増加しています。
そのため、できるだけ早く申立てを行う必要があります。
さらに、清算価値増加による廃止では、前回の廃止決定から次の申立てまでの間に手持ち資産がどのように増減したのか説明しなければなりません。
交際費や娯楽費、リスクの高い投資や子の就学支援費などで資産が減少している場合、それは「有用の資」(=有効な支出)とは認められません。
その結果、実際には手持ち資産が少ないにもかかわらず、減少前の高額な資産を基準に再生計画を作成することになり、弁済がさらに難しくなることがあります。
このように、廃止後の再申立て事案は、
- (家族を含めた)申立人本人の経済力
- 十分な資料に基づく具体的な説明
- 経験ある弁護士の的確なアドバイス
のすべてが揃わないと認可されないため、難しい申立になりがちです。
取下げ後の再申立て
個人再生を申立てると、裁判所から財産評価や履行可能性について、具体的な指摘を受け、説明を求められることがあります。
このとき、裁判所からの説明に対応できず取り下げしてしまうケースや、
説明をした後、さらなる調査が必要と判断されて個人再生委員が選任されるケースもあります。
個人再生再生には、20~40万円の追加費用がかかるうえ、詳しい調査及び報告が必要になりますので、これらの対応ができずに取り下げたケースも見かけます(※3)。
このような状況は、裁判所の求める収入確保の方法、資産評価の説明が出来なかったという点で、前項の「収入減少による廃止」や「清算価値増加による廃止」と似ています。
再申立てを行うと、裁判所では、前回の申立て資料が参照され、同じ担当者が対応する可能性が高い傾向にあります。
そのため、前回問題になった問題点について、どう克服したのかを明確に説明する必要があります。
- どのようにして収入不足を解消したのか
- どうやって支出を減らすのか
- 手持ち資産の推移と評価方法
これらの説明が十分でない場合、再申立しても同じ結果に至る可能性が高いため、慎重に準備を進めることが重要です。
まとめ
個人再生の再申立ては、裁判所の審査が初回よりも厳しくなる傾向にあります。
そのため、前回の申立てとは異なる点や改善点を明確に説明することが求められます。
特に、いったん廃止決定を受け、あるいは取下げをした事案では、履行可能性や資産の増減についてしっかりと説明する準備をして、専門家のアドバイスを受けながら手続きを進めることが重要です。
<注釈>
※1 例えば、一度再生認可を得たものの、弁済期間の途中で大きく債務が増えてしまうケースもまれにあります。この場合、再び個人再生を申立てることも可能ですが、実際には破産手続きへ移行することがほとんどです。
※2 再申立てに制限がかかるのは、過去に「給与所得者等再生」または「破産免責」(もしくは「ハードシップ免責」)を利用した場合です。過去7年以内に給与所得者等再生の認可確定歴がある場合でも、小規模個人再生での再申立ては可能です。また、7年以内に小規模個人再生の認可確定歴がある場合でも、再申立てを給与所得者等再生として行うことは可能です。
※3 当事務所では、このように申立後に取り下げる状況に陥ることがないよう、入念な聞き取りと準備を行うようにしています。
監修者情報

弁護士
吉田浩司(よしだこうじ)
専門分野:債務整理事件(任意整理・個人再生・自己破産など)
2004年(旧)司法試験合格 2006年弁護士登録、2010年8月にTMG法律事務所開業。任意整理、個人再生、自己破産等の債務整理事件に数多く取り組んでいる。特に個人再生の取扱が多い。