債務について

個人再生でローン中の車はどうなる?具体的な流れを詳しく解説

個人再生手続きにおいて、ローンを組んだ自動車はどのように処理されるのでしょうか?

自動車ローンでは、ローンを組む信販会社など(自動車ローン会社)が、全額回収するまで車の所有権を留保するケースがほとんどで、大半の場合「自動車を返却せよ」と主張されます。

ここでは、そういった自動車の引き上げの具体的な流れについて詳しく説明します。

 

1 受任通知の発送と債権者への到達(〜約5営業日)

個人再生手続の依頼を受けた弁護士は、自動車ローン会社など債権者に受任通知を発送します。受任通知には負債総額や債権者数のほか、「個人再生の申立てを準備するので今後の返済は停止する」と記載しています。

自動車ローン会社が受任通知を受け取ると、対象者の自動車ローン契約内容と返済状況を確認します。

自動車ローンを組んで購入する場合、購入時に車検証の所有名義を自動車ローン会社に指定することがほとんどです(自動車ローンを組んでいる方は、車検証の「所有者」欄をご確認ください。)。

そして、車検証に自動車ローン会社の名義がついている自動車の場合、ほとんどのケースで自動車ローン会社は自動車の引き上げを決定することになります。

 

 

2 引き上げの通知(受任通知発送から約7営業日〜10営業日後)

自動車ローン会社が自動車の引き上げを決定すると、自動車ローン会社は対象者の代理人弁護士に対して、自動車引き上げを予告する通知書を発送します。通知書には「契約書の条項に基づき自動車の返還を要請する」といった簡潔な記載とともに、契約書の写しが添付されることが多いです(最近は、引き上げ通知とともに、引き上げ業者の連絡先QRコードを記載し、メッセージアプリを使って日程調整するように促す自動車ローン業者もいます。)。

弁護士は契約書の条項や車検証を確認して、引き上げに応じるかを決定します。本稿では省略しますが、契約内容や残額次第では自動車を残すことができるケースもありますので、その場合は自動車ローン債権者との具体的な交渉に入ります。

 

3 引き上げに向けた調整(受任通知発送から約8営業日〜11営業日後)

引き上げに応じる場合、自動車ローン会社との間で、①引き上げ日程の調整、②引き上げ方法と引き上げ場所の調整、③必要書類の確認を行います。

①日程調整

自動車ローン会社からは、引き上げを担当する協力業者の連絡先が通知されます。そして、「平日の9時頃から16時の間で調整のつく候補日程をご連絡ください」といったように、ある程度はこちら側の都合を聞いてくれます。ただし、あまりにも先の日程は受け入れられません。おおよそ、受任通知発送日から10日から(長くても)30日以内に、引き上げ日が設定されるケースが多いです。

②引き上げ方法・引き上げ場所

自動車の種類や業者により、車両を荷台に載せるトラック(積載車)による場合と、業者が2名で訪問して引き上げ対象自動車を運転して行く場合など方法に違いがあります。どちらの場合であっても、自宅に業者にきてほしくない場合、自宅前にスペースが確保できない場合などは「近くの公園の無料駐車場」「近隣のホームセンター前の広い道路」など調整を図ることが可能です。

③必要書類の確認

車検証、リサイクル券などの所在確認の他、自動車を購入してから後付けした物品(特にドライブレコーダー貸与型の自動車保険に加入している場合のドラレコ)を外すように依頼されます。また、引き上げ日までに車内の私物を撤去する必要があります。

 

4 引き上げの実施(受任通知発送から約10営業日〜20営業日)

指定された日時に、自動車ローン会社の委託を受けた専門業者が自動車を引き上げに来ます。引き上げに際しては、債務者との間で鍵の受け渡しが行われます。

引き上げられた自動車は、自動車ローン会社がオークションや中古車販売業者を通じて売却します。売却代金はローン返済に充当されます。

売却代金がローン残高を超えた場合の超過分は債務者に返還されることもありますが、ほとんどのケースで超過することはなく、いくらか債務が残ります。

残った債務は、個人再生手続きで処理することになります。

なお、任意整理や自己破産手続の前提として自動車ローンの支払いを止めた場合でも、上記の手続きの流れは同じです。

 

まとめ

個人再生手続きにおける自動車の引き上げは、受任通知発送後、速やかに進められます。自動車ローン債権者にとっては、できるだけローンを回収するために自動車を早く売りたいからです。

 

とはいえ、購入された方が自動車を引き上げられてしまうと、通勤・通学など、家族の生活にとって不便になることが予想されます。

もし、自動車を残したい場合、債務整理に入る前であれば対象の自動車ローンを繰り上げ返済できないかを検討することが考えられますし、債務整理後でも家族や第三者の支援を受けて返済する方法(第三者弁済や買取り)が検討できます。対象の自動車がキッチンカーやトラックなど、業務用の車両であり、事業継続に不可欠といえる場合は、個人再生手続中もローンを払い続けることが可能なケースもあります(共益債権化といいます)。

また、残せないとしても、予想される引き上げの時期までに、家族の支援を受けたりしながら代わりの車両を調達することもあります。

自動車ローンの返済、自動車の引き上げ対応で不安のあるかたは、お早めに弁護士にご相談ください。

上記のような事情を抱えている場合は、個人再生手続きを円滑に進めるため、実際に返済が出来なくなるよりも早めに、相談されることをおすすめします。

 

監修者情報

弁護士

吉田浩司(よしだこうじ)

専門分野:債務整理事件(任意整理・個人再生・自己破産など)

2004年(旧)司法試験合格 2006年弁護士登録、2010年8月にTMG法律事務所開業。任意整理、個人再生、自己破産等の債務整理事件に数多く取り組んでいる。特に個人再生の取扱が多い。