個人再生から、自己破産への方針変更―最適な手段を選ぶために2―
個人再生を希望される多くの方々には、破産を回避し、財産を保持したいという理由があります。しかし、状況によっては、自己破産を検討したほうがよい場合もあります。
この記事では、個人再生の希望者が、自己破産を選択するべき事例について説明します。
1. イメージだけで破産を避けていた場合
債務整理の相談に来られる方々のなかには、破産だとすべての財産を失ってしまうと誤解していたり、信用情報のペナルティが大きいことを警戒して、個人再生を希望する方もおられます。
しかし、金融機関に対する影響面で言えば、破産も再生もあまり差がありません。また、破産の場合でも一定程度まで財産を残せます。
特に高額の財産がなく、担保付きの債務もなく、破産しても仕事が続けられそうだと判断できる場合、個人再生をあえて選択する経済的な利点はないかもしれません。
債務をできる限り返済することはとても重要なことです。しかし、同時にご家族やご自身の将来も考慮しなければなりません。
たとえば、個人再生による弁済期間中、子供の成長に伴い学費が増大することや、退職後の生活なども考えておく必要があります。再生によって数百万円の返済を確実に実行できるのか、将来の見通しが不確かな場合、自己破産が良い選択肢となることもあります。
2.履行可能性が乏しい場合
そのほか、依頼者がいくら再生を希望しても、債務状況やご本人の生活状況などから再生計画に従った弁済を確実に続けられる見込み(履行可能性)がない事案もあります。
以下に2つご紹介します。
履行可能性が乏しい場合その1(滞納税、住宅ローンが多い)
個人再生によって一般債務額を圧縮し、月額返済額を減らせる場合でも、すでに滞納している住宅ローン、管理費、固定資産税、滞納した国民健康保険などは圧縮できません。また、滞納税は再生申立前までに分割納付を開始し、差押を回避する必要があります。
このような場合、毎月の収入から、光熱費、通信費など生活に必要な支払いを遅れず続けながら、再生用の返済資金を積み立てつつ、さらに滞納した管理費、税金等の支払いを行う必要があります。相当な節約を余儀なくされ、本人の努力だけではどうにもならない場合があります。
当事務所では、このような状況の場合、取り崩し(換金)可能な資産(学資保険や社内積立金)を使うか、あるいは配偶者や親族から一時的に援助を受けて滞納を解消できないかを検討していただきます。
無理に裁判所に申立をしても、延滞解消が確認できるまでは手続を進めてもらえなかったり、取下げを勧告されることもあります。
とにかく住宅を残したいと個人再生を希望する方は多くいらっしゃいますが、滞納を解消し、生活費の不足なく積立継続ができない場合には、個人再生を断念していただく場合もあります。
履行可能性が乏しい場合その2(積立ができない)
受任当初の想定では、4万円から7万円の弁済積立金が可能だったはずが、実際には3万円ずら積立ができない場合があります。また、積立は何とか続いていても、住居費、通信費、保険料の支払いが延滞し始める案件もあります。
これらの原因は、急な出費や仕事の変化にある場合もあります。
しかし、大抵の場合、希望するご本人(又はご家族)の家計管理不足が原因のことが多いです。家計管理が徹底できないのは、浪費癖が治らない場合や継続して記録することができない場合、夫婦間で個人再生認可に向けた認識の共有ができておらず、連携が取れていない場合などがあります。
このような状況が何カ月も続き、改善が見られない場合、個人再生の道を進むことは難しいかもしれません。
個人再生が適切でない場合には、自己破産を勧めることになります。もっとも、当事務所が強制的に破産を申立てるわけにはいかないため、納得していただけない場合には手続きを中止することもあります。
個人再生と自己破産の選択は、複雑で重要な決断です。あなたの具体的な状況をよく考慮し、専門家のアドバイスを受けることが、将来の財政安定に向けた重要なステップとなるでしょう。
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監修者情報
弁護士
吉田浩司(よしだこうじ)
専門分野:債務整理事件(任意整理・個人再生・自己破産など)
2004年(旧)司法試験合格 2006年弁護士登録、2010年8月にTMG法律事務所開業。任意整理、個人再生、自己破産等の債務整理事件に数多く取り組んでいる。特に個人再生の取扱が多い。