事業収支実績表、要求されるのはどんな人
個人再生手続では、個人事業主(自営業者)が申立をする場合、「事業収支実績表」の作成・提出が必要です。
しかし、個人事業主といっても、最近は多様な働き方があります。複数のアルバイトを雇ってお店を経営している方もいれば、副業として休みの日や会社帰りに数時間だけ働く方もいます。
給与以外の収入がある方は、すべて「事業収支実績表」を作成しなければいけないのでしょうか。再生手続きで事業収支実績表を求められるのはどのような場合か、実例を挙げていきます。
個人事業主でも事業収支の提出が不要になる場合
(1)特定の会社から報酬をもらっている…これってどうなる?
事業収支実績表には、仕入れや人件費、店舗家賃、光熱費などを記入する欄があります。しかし、このような経費がかからず、特定の会社から給与のように毎月報酬をもらっている場合、事業収支実績表を作ってもあまり参考になる情報はありません。
そのため、裁判所に事情を説明して事業収支実績表を提出しない場合があります。
例えば、下記のような働き方をしている方は、事業収支実績表の提出が不要になる場合があります。
・専属下請けの建設業者(一人親方)
・配送業者(会社支給の車両を使用)
・システムエンジニア、WEBデザイナー(プログラマー)
・個人配達業者(ウーバーイーツなど)
(2)事業収支の要否が分かれるポイント
ポイントになるのは、
「人を雇っているかどうか」
「一定以上の仕入れ、経費がかかるかどうか」
「報酬を支払うのが1カ所かどうか」といった事情です。
上記の方々でも、お金の出入りの頻度や収支の総額、事業の規模が大きい場合には、裁判所の指示により、事業収支実績表の提出が必要になります。
事業収支実績表が必須の個人事業主とは
以下の場合には、ほぼ例外なく事業収支実績の提出が必要になります。
・店舗がある
・人を雇っている
・商品を仕入れている
・不特定多数と売買関係がある
店舗、事業所(事務所)があってその維持費がかかる場合はこれに該当します。
また、飲食業、小売業、卸売業など、仕入れ先、売上先が複数ある業種は、個人事業主として、事業収支実績表を提出します。
個人経営の建設業者や運送業者、プログラマーも、業務を外注したり、従業員を複数雇っている場合、業務用備品(車両、機械)に一定の経費が掛かる場合、専属でなく複数の取引先がある場合には、事業収支実績表の提出を求められる可能性が高くなります。
事業の収支を記録することは、再生認可のための第一歩
個人事業の場合、季節、流行や競合他社の登場によって売り上げが頻繁に上下することも多くあります。ですので、一般的に、個人再生の認められやすさでいえば、会社勤めで決まった給与を受け取っている人よりも、個人事業主のほうが難しいケースが多いといえます。
裁判所に個人再生を認めてもらうためには、履行可能性、つまり、事業で継続的に利益を上げて、将来的に返済できる見込みが高いことを資料で示さなくてはなりません。
事業収支実績表を作成することは、事業の現状を把握して、将来性を客観的に見通すのに非常に役立ちます。いますぐ再生する必要はなくても、まずは3~6カ月分の事業収支を作成し、事業の将来性を見極めることは、とても有意義だと思われます。
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監修者情報
弁護士
吉田浩司(よしだこうじ)
専門分野:債務整理事件(任意整理・個人再生・自己破産など)
2004年(旧)司法試験合格 2006年弁護士登録、2010年8月にTMG法律事務所開業。任意整理、個人再生、自己破産等の債務整理事件に数多く取り組んでいる。特に個人再生の取扱が多い。