きちんと聞いてくれますか? 債務整理を依頼するまえに
近ごろ、「国が認めた借金減額制度あります」など、たくさんの債務整理の広告がネットで表示されています。
当事務所では、債務相談に来られた方から、これまで相談を受けた弁護士、司法書士とのご相談内容をお聞きすることがあります。
何人も相談内容をお聞きするうち、相談者にとって無用、あるいは不適切な方法で債務整理を進めようとする弁護士や司法書士が多くいることに気づきました。
以下では、相談者にとって、本当にその弁護士、司法書士に債務整理を依頼してよいのか少し考えたほうが良い場合について説明いたします。
依頼するまえに考えるべき債務相談
複数の方法があることを説明しない債務相談
個人の債務整理の方法には、大きく分けて任意整理、個人再生、自己破産の3つがあります。
病気で働けなくなったり、失業して再就職が決まらない場合、自己破産しか選べない場合もあります。しかし、一定以上収入のある方の場合、2つ以上の方法が選べることが多いです。
3つの方法は、それぞれ利点や難点が違います。ですから、相談者の返済能力、お持ちの資産、職業、家族関係やご要望に応じて、最適の方法を選択する必要があります。
たとえば、お子さんを育てている家庭が、任意整理を選択し、長期返済、あるいは毎月高額の返済を必要とする計画を立てたとします。このような場合、お子さんが進学するにしたがって教育費がかさみ、数年で返済不能になる例もあります。
また、任意整理や個人再生で、昨年までの収入実績しか確認せず、近い将来配置転換や転勤があることを考慮せずに返済予定を組んで、やはり返済不能に陥った例もあります。
あるいは、相談者の「家族や会社に知られたくない」という強い要望により、個人再生、自己破産を選択肢から外すこともあります。
しかし、裁判所は、家族や会社に対し、再生や破産があったことを直接知らせるわけではありません。債務内容や生活の状況によっては、家族や会社に知られることのないまま個人再生、自己破産を完了できる場合もあります。
漠然としたイメージだけで、減額効果の大きい方法を検討しないのは相談者にとって最善の結果とはいえません。再生、破産の利点と難点を具体的に理解し、状況を想定できれば、安心して最適の選択ができます。
このように、債務相談では、経験豊富な専門家が、色々な視点から、相談者が求める結果や目的を理解したうえで方法をアドバイスする必要があります。
ところが、事務所によっては、3つの債務整理のうち、任意整理だけ、あるいは任意整理と自己破産だけしか扱わないところも多くあります。
個人再生が最適な相談者、再生あるいは破産が望ましい相談者の案件でも、任意整理を無理に勧める事務所もあるようです。
面談しない債務相談
最近は、インターネット広告や折り込み広告で電話、電子メールでの問い合わせを常に受付しつつ、かんたんな事情を聞くだけで債務整理を受任する事務所が増えているようです。
電話で債務整理のアドバイスをしたり、見通しを伝えることは無理なことではありません。また、ここ数年、オンライン会議ツールなどが普及しているため、数字や資料を示しながら映像と音声でやり取りできる場合も増えてきています。
しかし、複数の債務整理の方法を説明したり、相談者が気にしていなかった財産や債務について聞き出すこと、収入見込みや家族状況から最善の選択を決めていくことは、電話などの通信手段による相談だけでは、相当難しいのを実感します。
また、現状では、電話で受任できる事務所は、ほとんどが「任意整理」に限っているようです。
当事務所では、いまのところ、債務整理の事件を受任する場合には、原則として1回か2回は面談を実施して、見通しや必要な資料についての説明を尽くすようにしています。
こうすることで、お互いの思い違いや聞き忘れを防ぎ、十分に納得したうえでの方法選択が実現できます。
弁護士が出てこない債務相談
弁護士事務所の広告を見て債務相談に行かれた方々のなかには「債務の聞き取りと方針の相談は事務職員が行って、弁護士には会わなかった」という方もおられます。そこまでではなくても、弁護士は、最初か最後にあいさつするだけで、相談はすべて事務職員にまかせている事務所も多いようです。
当事務所では、すべての無料債務相談に弁護士が対応し、事情をよく聞いたうえで相談者が取りうる方法をご提案しています。それは、経験のある弁護士が直接聞き取って対応しないと、事実の聞き違いや法制度の知識不足によって、本来であれば可能性のある個人再生や自己破産を「できない」と伝えてしまう可能性があるからです。
実際に、当事務所では、他事務所ではできないといわれた個人再生を引き受け、認可を得た例がたくさんあります。
他事務所で断られた方々の理由の多くは「(うちでは)再生をやったことがない」というものですが、なかには「○○の債権者が必ず反対するから申立できない」とか、「収入が高いから再生できない」など、間違った理由で断られた方もいます。
まとめ
以上のとおり、1つの方法しか提案しない債務相談、十分に面談や弁護士対応をしない債務相談では、相談者にとってよりよい選択をする機会が奪われてしまいます。
その結果、大切な財産を処分せざるを得なくなったり、あるいは遂行不可能な返済計画を組んでしまい、あとでもういちど個人再生、自己破産をせざるを得なくなることも少なくありません。
債務相談する際には、複数の方法を説明してくれる事務所かどうか、電話だけでなく、きちんと弁護士(、あるいは司法書士)が説明してくれる事務所かどうかをお確かめください。
ところで、当事務所に寄せられるお問い合わせには、電話やメールで相談したいとのご要望も多数いただいております。
個人再生については、個人再生手続きによって減らせる債務額の見込みや、一般的な注意点については、「再生サポート」でかんたんにお問い合わせいただけます。
ただ、実際にご依頼を検討したい場合や、任意整理、個人再生、自己破産どの手続きを進めるべきか決定する際には、来所予約を頂き、事務所でご相談いただくようにお願いしています。日中お仕事されている方に合わせて、夜間(6時~8時)の相談も受け付けていますので、すぐに対応が必要な方はもちろん、先のことを考えて自分にとってどの方法が合うのか知りたい方は、いつでもご相談ください。
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監修者情報
弁護士
吉田浩司(よしだこうじ)
専門分野:債務整理事件(任意整理・個人再生・自己破産など)
2004年(旧)司法試験合格 2006年弁護士登録、2010年8月にTMG法律事務所開業。任意整理、個人再生、自己破産等の債務整理事件に数多く取り組んでいる。特に個人再生の取扱が多い。