退職金見込額の調べ方を詳しく紹介
個人再生手続では、勤め先で5年以上働いている場合、退職金見込額を証明することが求められます。
退職金に関する資料とはどのようなものか、どうやって取得し計算するのか、詳しくみていくことにします。
まずは退職金規定を確認
申立前の準備として、まず退職金規定があるかどうかを確認しましょう。
就業規則に退職金規定が記載されていることが多いので、手元にない方は、人事課などに写しをもらえるか問い合わせてみましょう。
※法律上、10人以上働いている事業場には就業規則の備置きが義務化されています。
そのほか、入社時の雇用契約書や、雇用条件通知書などに退職金規定のある/なしが記載されていることもあります。
就業規則や雇用関係の書類に退職金が「なし」と明記されていれば、その書類を提出すれば退職金を調査したことになります。
退職ポイントとは?
中規模以上の企業では、ポイント制で退職金を計算しやすくしていることがあります。
勤続年数や役職などに応じてポイントを加算し、退職金規定の計算式にあてはめて退職金の金額を算出します。
この場合、ポイントがわかる資料(給与明細などに記載されていることがあります)と、計算式がわかる資料(退職金規定)があれば、別途証明書を取得する必要はありません。
情報が電子化された企業
毎月の給与明細や源泉徴収票などの情報をインターネット上から閲覧できるよう電子化された会社も増えてきました。
このような仕組みを採用した会社では、各社員のマイページなどにログインすれば、自己都合、あるいは定年退職時の退職見込金が表示されることもあります。この場合は、会社に退職金規定や証明書を求めなくても見込金額の証明が可能です。
退職金証明書が必要になる場合
小規模、個人経営の勤務先などでは、就業規則がない場合や、就業規則、退職金規定があるかどうかわからない場合もあります。
そのような場合、勤務先に「退職金証明書」を発行してもらう必要があります。退職金の見込みがある場合にはその金額や条件を、そもそも支払い規定がない場合には「退職金 なし」と一筆書いてもらうのです。
ただし、普通は、このような証明書を退職前に必要とする社員はいません。
依頼者の中には、経理担当者や役員に詳しく理由をきかれるのではないかと考え、実行に移すのをためらう方も多くおられます。
このような場合、「生命保険を加入する際のプランニングに必要」「子供の教育資金、奨学金を借りるかどうか考えたい」「老後資金を確認するから」などの理由を説明して取得した例があります。
確定拠出年金はどうなる?
会社によっては、企業型確定拠出年金に加入している場合があります。
確定拠出年金は、退職金の代わり、または退職金制度と併用して老後の収入源のために加入するものです。
確定拠出年金は、原則として60歳に達しないと支給されません。その意味で、中途退社により現金化できる退職金とは性質が異なるため、個人再生手続の中ではその掛金、見込金額は返済に影響しません。
もっとも、会社で加入している退職金制度がどのようなものかを説明するために、確定拠出年金制度の資料を提出する必要があります。
手続きを円滑に進めるために
退職金は、すぐにもらえるわけではありませんが、もし、会社を辞めたときにはそれなりの金額が支給されるため、定期預金や学資保険と同様に、預け金と同等の役割があります。
ただし、退職を伴うため、預金や保険のように自由に受け取ることはできません。大阪地裁のルールでは、現在の自己都合退職の見込額の8分の1(12.5%)を清算価値(手持ち資産)の一種として計算して、再生計画による返済額との調整を行います。
昭和、平成のはじめと異なり、退職時に2000万、3000万円も受け取れる民間企業はずいぶん減りました。それでも、勤続10年~30年務めた方は、100万円~800万円程度の退職金が見込まれますので、再生手続では必須の調査となります。
ご依頼を検討される方は、現在の勤め先の退職金制度を一度調べておくのがよいでしょう。
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監修者情報
弁護士
吉田浩司(よしだこうじ)
専門分野:債務整理事件(任意整理・個人再生・自己破産など)
2004年(旧)司法試験合格 2006年弁護士登録、2010年8月にTMG法律事務所開業。任意整理、個人再生、自己破産等の債務整理事件に数多く取り組んでいる。特に個人再生の取扱が多い。