再生の見込みが変わってしまう!自宅の清算価値
個人再生手続を検討される方は、住宅ローンの残債務が不動産の時価よりも多い状態(オーバーローン状態といいます)がほとんどです。
住宅ローン特約付き個人再生を利用する場合、オーバーローン状態でなければ、返済額が減らずメリットが少ない可能性もあります。
住宅ローンの残債務が不動産の時価よりも少ない状態(ここでは、アンダーローンといいます)とはどのような場合か、また再生手続にどのような影響があるのか、詳しくみていくことにします。
アンダーローンになる事例
新築のマンションや戸建ては、購入したとたんその価値は下がります。
ですので、マンションや戸建て購入のために住宅ローンを組んだ当初は、アンダーローンになることは少なく、オーバーローン状態が殆どです。
しかし、住宅ローンを支払っていくと、残債務は減っていきます。また、都市部では、土地(敷地)やマンションの価値が購入時よりも値上がりすることもあります。
そのため、不動産の時価が残ローンよりも高くなることがあります。
そのほか、購入時に親の贈与を受けた方や、繰り上げ返済をした方も、不動産の時価がローン残額を上回る(アンダーローン)ことがあります。
アンダーローンの具体的な例としては、下記のような状況が挙げられます。
・住宅ローンの完済が近い
・購入資金の半額だけ住宅ローンを借りて、あとは自己資金で払った。
・実家を譲り受けて、リフォームローンを組んで改修して住んでいる。
返済額が増えてしまう?!個人再生とアンダーローン
では、不動産の価値のほうが大きくなると、何が問題なのでしょうか。
例えば、不動産の時価が2000万円とされた時に、住宅ローンの残債務が1500万円であった場合、清算価値は2000万円-1500万円=500万円(500万円の財産を持っている)と計上されます。
個人再生手続では、持っている財産の価値よりも高い金額を返済しなければならない「清算価値保障原則」(コラム「清算価値保障の原則とは」参照)があります。
そのため、上記の場合では500万円以上を返済しなければならないことになるのです。
個人再生での返済総額を最大300万円と見込んでいた場合、3年計画だと月の返済額は約8万4000円ですが、500万円の場合は約13万9000円となり、月5万円以上の差が出てしまうことになります。
評価額とその根拠の示し方
住宅ローン特約付き個人再生手続を申し立てる際には、固定資産税評価額(固定資産税の納付書類に記載されている)と、不動産業者の査定額を両方提出することが多いです。
大阪では、固定資産税評価額ではなく、不動産業者の時価査定額を根拠に清算価値が決定されます。このとき、物件によっては、業者の時価査定が2倍近くになることもあります。
まずは住宅ローン残額と、固定資産評価額をご確認ください。いずれも同じくらいの金額になっている方は、アンダーローンの可能性が高いと言えます。
正確な査定額は、不動産業者が保有する売買情報が必要ですので、簡単には調べられません。ただし、お住まいが一定以上の規模のマンションの場合、チラシや、不動産情報サイトで、同じ物件の似た間取りの売り出し価格を確認することでおおよその時価が想定できます。
清算価値の判断は弁護士に相談できる
以上のとおり、再生の返済見込み額を計算するには、債務額と、清算価値(財産の評価額)が必要であり、特に自宅の評価額は大きな影響があります。
個人再生をお考えの方で、住宅ローンを長年返済されている方、自宅の時価額が分からない方は、弁護士に相談する際に「固定資産税の納付書(冊子全て)」や、「住宅ローン返済予定表」、「不動産登記簿(全部事項証明書)」などの資料をお持ちになれば、より詳しいご相談ができるでしょう。
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監修者情報
弁護士
吉田浩司(よしだこうじ)
専門分野:債務整理事件(任意整理・個人再生・自己破産など)
2004年(旧)司法試験合格 2006年弁護士登録、2010年8月にTMG法律事務所開業。任意整理、個人再生、自己破産等の債務整理事件に数多く取り組んでいる。特に個人再生の取扱が多い。