口座の凍結 お金が引き出せない!そんな時どうする?
個人再生手続などの債務整理を行うと、預金口座が凍結され、出金ができなくなることがあります。
たとえば、給与口座が凍結され、何カ月にもわたって出金ができなくなると、非常に困ったことになります。
このコラムでは、どういう場合に口座が凍結されるのか、凍結されたらどうやって対処するのか、口座凍結の理由や、出金方法などを、詳しくみていくことにします。
すべての口座が凍結されるわけではない
債務整理の手続きをしたからといって、すべての預貯金口座が凍結されるわけではありません。
基本的には、銀行などの金融機関に借り入れがある場合、債務整理の手続きに入ったことがその銀行に知られると、その預金口座が凍結される可能性があります。
ですので、消費者金融や、クレジットカード会社の債務整理を行うことだけでは、銀行などの口座が凍結されることは滅多にありません。
銀行などでは、お金を貸すとき、借主の預金を貸付金と相殺できる規定を契約書に含めています。
この規定を根拠に、借主が債務整理に入り、返済が期待できなくなったときには、預金残高を相殺して一部でも貸付金を回収しようとするのです。
この相殺処理を行うまで、債務者が預金を出金してしまわないよう、口座を凍結してしまいます。
もし、借入の際に保証会社を付けていても、金融機関のシステム上、弁護士が債務整理を通知した時点で一律に口座凍結を行うこともあります。
その金融機関に借り入れがなくても、破産手続などの通知が届いた場合には、まれに口座を凍結される場合があります。
一部ならお金を引き出せることも
債務整理を理由に凍結されてしまうと、その日までに入金されていた残高は、債務残金と相殺されることが見込まれます。
ただし、凍結した日よりあとに入金された給与や報酬などは、生活に必要な資金であることを説明し、理解が得られれば出金できることがあります。
手続きは銀行によって様々ですが、大きく分けて以下の2つのケースがあります。
・弁護士から銀行に連絡後、本人が支店窓口で出金手続きをする
・弁護士が作成した出金依頼書などを本人が持参して、支店窓口で出金手続きをする
いずれにしても、銀行窓口が開いている平日の日中に本人が出向かないといけないので、とても手間がかかります。
借入のある銀行を、給与振込口座として設定しているかたは、注意が必要です。
いつ解除される?口座はそのまま使えるの?
凍結解除(口座復帰)のタイミングや、口座が強制解約されるかどうかは、金融機関によって様々です。いずれも、契約の内容や凍結の理由によって変わりますが、いくつか例を示します。
①その金融機関に借入れがあり、借入契約に保証会社がついていない
a 凍結→相殺が終わり次第凍結解除、口座復帰
b 凍結→相殺が終わり、債務整理手続きも終了してから凍結解除、口座復帰
c 凍結→相殺が完了したあと、強制解約
②その金融機関に借り入れがあり、保証会社がついている
a 凍結→保証会社が代位弁済を完了したあとに凍結解除、口座復帰
b 凍結→相殺が完了し、さらに保証会社が代位弁済を完了したあとに凍結解除、口座復帰
c 凍結→相殺が完了したあと、強制解約、さらに残った債務を保証会社が代位弁済(信金など)
①―cや②-cのように強制解約になるケースは、信用金庫や信用組合の場合が多いです。
信金や信組には口座を開設する時に加入資格があり、「破産など法的な債務整理を行うとその資格を失う」という規約が定められていることがあるからです。
破産以外の手続きでは、まれに資格喪失の対象にはならない(強制解約にならない)こともありますが、それぞれの金融機関の判断によるため、支店担当者に確認が必要です。
凍結された口座をどうしても利用し続けたい事情があれば、依頼した弁護士や司法書士に事前に説明し、その後の状況を確認しておきましょう。
相殺とは?預金はどうなる?
相殺とは、「お互いの債権を差し引きして帳消しにすること」を言います。
例えば、銀行に預金が50万円あり、100万円を借り入れたあと、返済ができなくなった場合、銀行は債務者の持つ預金50万円と貸し付けた100万円のうちの50万円を「相殺」して帳消しにすることができます。
債務者は預金がゼロになり、銀行は貸付額が50万円となります。
すべての預金が自動的に相殺可能なわけではなく、ローンの契約内容や信金・信組の規約に相殺が可能かどうか記載があります。借り入れをする際にはしっかりと確認しておくべきです。
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監修者情報
弁護士
吉田浩司(よしだこうじ)
専門分野:債務整理事件(任意整理・個人再生・自己破産など)
2004年(旧)司法試験合格 2006年弁護士登録、2010年8月にTMG法律事務所開業。任意整理、個人再生、自己破産等の債務整理事件に数多く取り組んでいる。特に個人再生の取扱が多い。