家計について

家計収支表の作り方

個人再生手続きを申し立てる際、依頼者の皆様が難しい、どう書いたらいいのかわからないとご相談されるのが「家計収支表の作成」です。

 

ほとんどの裁判所では、個人再生手続あるいは破産手続の申立をする際、直近2ヶ月分の家計収支表を提出することになっています。しかし、それまでお金の出入りを記録する習慣がなかった方にとって、いきなり2ヶ月分の収支をまとめることはかなり難しいでしょう。

 

個人再生手続を契約してから、実際に申し立てるまで、費用の積立や書類の収集で数ヶ月かかることがほとんどです。当事務所では、この間に、家計収支表をご準備いただくようお願いしています。

このコラムでは、家計収支表はどのように作成すればよいのか、順を追って解説します。

※ 以下の例は、当事務所が近畿圏内で実際にお受けした依頼案件に基づくものです。作成方法は対応地域、弁護士、司法書士により異なります。

 

【まずは資料集めから】

家計収支表には、一カ月ごとの収入と、項目ごとまとめた支払いを記入しますが、それには根拠となるものが必要です。

収入の場合、

・給与明細

・子ども手当の給付決定書

・年金の通知書

などが主な根拠となります。

自営業の場合は、報酬や売り上げの入金がある口座の通帳履歴を根拠とします。

 

支出の場合、

・電気、ガス、水道料金の領収書

・家賃または住宅ローンの支払い記録

・電話料金、通信費の領収書

・保険料金の領収書

・(お子さんがいる場合)教育費の支払い記録

などが主な資料です。

支出については、口座振替になっていれば、通帳履歴を支払の根拠として金額を確認することができます。

その他、食費、医療費、日用品、被服費なども、可能であればレシートを保管しておいて、すべて記入できるようにしておくのが理想です。

まずは1ヶ月分、領収書や金額のわかる資料を、捨てずに保管するところから始めましょう。

 

【1日始まり?給料日スタート?区切りを決める】

家計収支表は、1ヶ月ごとの収支を記録するものです。基本的には、毎月1日から末日を区切りに数字を集計しますが、「給料が入った日に諸々の支払いをする」というサイクルの方も多いでしょう。給料日基準で家計収支表を作成することも可能です(例:6月25日~7月24日)。

一度区切りを決めたら、その後も同じ期間で作成します。

 

 

【資料があるものから数字を埋めていく】

家計収支表は、各裁判所によって書式があり、項目が記載されています。集めた資料に基づいて、対応する項目のところに数字を埋めていきましょう。もちろん、すべての項目を埋める必要はありません。(下図は大阪地裁・個人再生手続用の家計収支表)

 

項目に迷った場合は、「その他」のところに内容を記載して、金額を入れます。その月だけの臨時収入や、数か月に一度支払う税金なども、「その他」に記載します。

食費や日用品は、買ったものを細かく分けて記録することはなかなか難しいでしょう。レシートを紛失している場合も少なくありません。

ここで「資料がない、わからない」とつまづいてしまう方もいらっしゃいます。しかし、まずは完成させることが重要です。大まかな数字でよいので、一旦記入してみましょう。

なお、一般的な食費の平均は、一人暮らしの場合3万円~5万円、家族3人であれば5万円~8万円程度です。

 

【よくある家計収支の間違い】

光熱費や電話料金の「当月の利用料」を当月の支出に記入してしまう方がおられます。

たとえば、光熱費などは、前月分(1月)の使用量に応じた料金を翌月(2月)に支払う形になっていることが多いです。その場合、利用月ではなく、支払月を基準に記入しましょう。2月に払った料金は、1月の利用料金であっても、2月の家計収支に支出として記入します。

お金がなくて払えなかったり、口座振替できなかった場合は、その月の支払い金額は0円となります。翌月にまとめて支払った場合は、翌月に合計額を記載します。

 

また、2か月に一度の収入、支出を勝手に一月分に割り付けてしまう例も良くみます。たとえば、偶数月に2か月分入金される年金を2で割って毎月の収入欄に記入したり、2カ月分の水道料金を半額ずつ支出欄に記入するなどです。

現実に入金、支払のあった月に2カ月分記入するのが正しい記載方法です。

 

【現状を把握することが第一歩】

数字が埋められたら、収入の合計と、支出の合計をそれぞれ計算します。

収入の合計から支出の合計を引いて、翌月への繰り越し(余剰金)が出れば問題ありません。しかし、マイナスになっていると、その月の生活は赤字ということになってしまいます。

一時的に預金や前月の繰り越しで支払いができていても、毎月赤字が続けば、いずれは生活できなくなります。

ぴったり正確な金額でなくても、いちど家計収支表を作成してみれば、どの項目の支出が多いのか、どこを節約すれば赤字を解消できるのか、あるていど把握できる場合が多いです。個人再生手続きを申し立てるまでに、履行可能性が認められるように収支を改善していけばいいのです。

 

【間違っていても作ってみる】

ご依頼者様の中には、「正確ではないのに提出してよいのか」「全部は記入できていないから提出できない」とおっしゃる方もいらっしゃいます。

しかし、当事務所では、裁判所に正式に提出するまでに、担当事務員が内容をチェックし、弁護士が確認して提出します。資料が不足していたり、数字が不明であれば、担当事務員からどういった資料が必要か、また資料の取得方法などもお伝えして、完成までお手伝いします。

不完全なものをそのまま裁判所に提出したり、そのために個人再生手続の進行に支障が出るようなことはありませんので、まずは作成してみることが重要です。(逆に、家計収支表を提出しないことで、申し立てができない・手続きが進行できないケースは多々あります。)

 

監修者情報

弁護士

吉田浩司(よしだこうじ)

専門分野:債務整理事件(任意整理・個人再生・自己破産など)

2004年(旧)司法試験合格 2006年弁護士登録、2010年8月にTMG法律事務所開業。任意整理、個人再生、自己破産等の債務整理事件に数多く取り組んでいる。特に個人再生の取扱が多い。