不同意の理由―給与所得者等再生その5
なぜ債権者は不同意の意見を出すのか?
全7回に分けて、「給与所得者等再生手続き」の特色について説明しています。
前回、給与所得者等再生は債権者が不同意を出す見込みの場合に利用することをご説明いたしました。
第5回は、「債権者が不同意意見を出す理由」についてご説明します。
2022年現在、個人再生手続きが創設されてから約20年が経過していますが、当初想定していたよりも、債権者による反対意見(不同意)はあまり出てきません。
銀行や消費者金融は積極的に意見を述べることはまずありませんし、多くの信販会社(カード会社)も意見を述べません。
そのような中でも、前回ご説明したとおり、不同意の意見を提出する債権者は存在します。
一般的に、もともと低利率で貸付している公的な団体(公務員共済など)は、回収不能が生じると損失が大きいからか、不同意することが多いようです。
信販会社が不同意を述べるとき、「貸付時に聞いていた年収、資産状況からすれば給与所得者等再生によれば返済額が増えるのではないか」との動機で不同意する場合が多いようです(ただし、不同意意見書には理由が書かれていません。)。
このような場合、申立代理人の事務所が、不同意の動機を確認したうえで、たとえば「当時より年収、資産が激減しており、いま給与所得者等再生を行っても予定返済額は増えない」など動機に理由がないことを説明し説得することで不同意を撤回させた例があります。
その他、借入後すぐに再生を申し立てた場合や、個人の債権者の場合、再生によって減免を希望するという申立人の態度に納得できず不同意の意見を述べる場合があります。(賃料や原状回復未処理の賃貸物件オーナーなども要注意。)
債権者をいくら説得しても小規模個人再生に協力してもらえない場合、やむを得ず給与所得者等再生手続を選択します。
給与所得者等再生の場合、いかに強硬に反対する債権者がいても、裁判所が許可すれば、再生による債務の減免は認められます(犯罪行為による損害などの非免責債務は除く)。
給与所得者等再生の実情―給与所得者等再生その1
給与所得者以外の利用者―給与所得者等再生その2
給与所得者等再生を利用するとき―給与所得者等再生その3
不同意意見を述べる債権者―給与所得者等再生その4
不同意の理由―給与所得者等再生その5
不同意で棄却された後は―給与所得者等再生その6
再生認可後の違い―給与所得者等再生その7
監修者情報
弁護士
吉田浩司(よしだこうじ)
専門分野:債務整理事件(任意整理・個人再生・自己破産など)
2004年(旧)司法試験合格 2006年弁護士登録、2010年8月にTMG法律事務所開業。任意整理、個人再生、自己破産等の債務整理事件に数多く取り組んでいる。特に個人再生の取扱が多い。