所得が安定しない場合は―自営業者の個人再生2
長期的な収支記録で裁判所を説得
自営業者の方の個人再生手続に関する特集第2回は、自営業者の事業見通しと履行可能性について取り上げます。
個人再生の申立てを受付けた裁判所は、再生計画に沿った返済が確実に支払えるか(履行可能性)を慎重に判断します。
自営業者は、履行可能性の点で給与所得者よりも厳しく判断されがちです。
それは、毎月の売上げが一定せず、不安定な収入となることが多く、毎月確実に返済できることを裁判所に理解してもらうのが難しいからです。
しかし、収入が不安定でも、一定期間の収支記録(6か月~1年程度)があれば、所得(売上)の上下の幅や、季節ごとの売上傾向がわかるため、裁判所が申立人の事業状況を理解しやすいです。
また、直近の実績だけでは履行可能性に不安がある案件でも、それまで数年にわたる売り上げの推移や取扱商品の市場、現場動向を示して、今後見込まれる平均的な所得を予想することもできます。
当事務所では、直近の収支では履行可能性を認めてもらいにくい個人事業主でも、上記のような過去の実績や業種の説明を行い、履行可能性が認められた例もあります。
なお、再生計画では、支払いを3ヶ月ごとにすることもできます。
しかし、返済資金の積立てを3ヶ月に1度にしてしまうと、積立が不足したり、資金繰りが難しくなります。そのため、当事務所では、すべての案件で積立は毎月実施することにしています。
ただし、自営業者は収入の変動があることから、収入に応じて積立額を減らしたり、少なかった翌月には積立金を増額したりするなどして、実情に応じた積立を計画しています。
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監修者情報
弁護士
吉田浩司(よしだこうじ)
専門分野:債務整理事件(任意整理・個人再生・自己破産など)
2004年(旧)司法試験合格 2006年弁護士登録、2010年8月にTMG法律事務所開業。任意整理、個人再生、自己破産等の債務整理事件に数多く取り組んでいる。特に個人再生の取扱が多い。